自分さえよければいい「自己中」な人と、人に尽くすのが大好きな「お人好し」な人、どちらが成功者に多いのか?こんなことを研究した例があります。

以下でご紹介する『GIVE&TAKE』では、前者を「テイカー」(受け取る人)、後者を「ギバー」(与える人)と呼び、そのバランスをとる人を「マッチャー」と呼び、どのタイプの人が一番得をしているのかを調べ上げています。

今日はこの研究結果を中心に見ていきたいと思います。

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こんな本に書いてありました。

 

『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』(アダム・グラント)

 

※アマゾンの紹介文より

「ギブ&テイク」とは、この世の中を形成する当たりまえの原理原則に思える。しかしこれからの時代、その“常識”が果たして通用するのかどうか―著者の問題提起が、アメリカで大論議を巻き起こしている。人間の3つのタイプである、ギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)。このそれぞれの特徴と可能性を分析したするどい視点。世界No.1ビジネス・スクール「ペンシルベニア大学ウォートン校」史上最年少終身教授、待望のデビュー作!!

 

(著者略歴)

グラント,アダム

ペンシルベニア大学ウォートン校教授。組織心理学者。1981年生まれ。同大学史上最年少の終身教授。『フォーチュン』誌の「世界でもっとも優秀な40歳以下の教授40人」、『ビジネスウィーク』誌の「Favorite Professors」に選ばれるなど、受賞歴多数。「グーグル」「IBM」「ゴールドマンサックス」などの一流企業や組織で、コンサルティングおよび講演活動も精力的に行なう

 

 

これが「自己中とお人好しの成功度」だそうです。

 

【事実1】「お人好し(ギバー)」は最も評価が悪い

  • プロのエンジニア160名にお互いの仕事ぶりを評価してもらうと、最も評価が悪かったのはギバーだった。仕上げた仕事、報告書、製図の数、ミスの数、締切の遵守、コスト削減などあらゆる指標で最低点をマークした。
  • ベルギーの医学生600名を調査した結果、ギバーが最も成績が悪かった
  • 販売員を調査したところ、テイカーとマッチャーは年間売上がギバーの約2.5倍であった

 

【事実2】ところが、最も評価が高いのもまた「お人好し(ギバー)」である

  • プロのエンジニアで最も生産性の高いエンジニアはギバーであった
  • ベルギーの医学生の中でも最も成績が高い学生はギバーであった
  • 販売員でも最も売上が高い販売員はギバーであった

 

これが「『成功するお人好し』と『しないお人好し』の違い」だそうです。

 

  • カナダで地域社会への支援と人道活動に貢献した人に贈られる「ケアリング・カナディアン賞」の受賞者をインタビューして調査したところ、彼らは普通の人へのインタビューと比較して「他者の利益」に3倍以上触れていた
  • それと同時に、受賞者は普通の人に比べて「自分の利益」に関しても2倍以上触れていた
  • つまり、他人への貢献とともに自分の利益も考えているギバーの方が成功する可能性が高い

 

 

上記をどう考えれば良いか。

 

「自身の成功のために、まずは他人に尽くしましょう」「他人に与えるほど自分に返ってきます」という教えは自己啓発書に頻繁に出てきます。それは確かに美しい行為だと思うのですが、その行為自体と自身の成功とがどんな因果関係になっているのかを論理的に説明している書籍は少なく、ただ耳障りがいいことを述べているようで、個人的にはあまり共感することができませんでした。唯一、『影響力の武器』でチャルディーニ教授が「返報性」モデルを使ってこの因果関係を説明しているように思えます。

なので、本書も最初はあまり共感できませんでした。「「与える人」こそ成功する」という副題も、世界中のお金持ちを調べた結果、成功者にはトランプ大統領をはじめ「ほしいものはどんな手を使っても手に入れる」人が多いという僕自身の研究結果と沿わず、理想主義的な戯言を述べた悪書かと思い、途中で読むのをやめようかと思いました。

が、本書をよく読むと、アダム・グラント教授の主張は「「与える人」こそ成功する」ということではないことがわかります(こういうミスリードするサブタイトルをつけるのは止めた方がいいと思うのですが…)。

教授は、ギバーは成功する人もしない人もいて、前者は「他者の利益と同時に自己の利益も考えられる人」であることを述べているのです。これなら、僕自身の研究結果や肌感覚ともフィットするものです。

成功者は、他者への貢献になりながら自らの利得にもなることも考えます。そしてこの2つは決してトレードオフの関係ではなく、むしろシナジーを生む関係になることが多いのです。何故なら、社会的価値の高さはそのまま自分の市場価値になるからです。

逆に、成功できない人は、他者への貢献はおろか、自分の利益すらあまり考えない人が多いようで、それはとても勿体ない考え方ではないかと思うのです。

他者に貢献し、認められることは人生で最大の喜びです。それこそが他者への利益(貢献)と自己の利益(喜び)が同時に最大化できる営みです。そしてまた、自らの喜び(趣味や仕事)を追求していくことは、おそらく誰かの役に立つことが出来ます。それもまた、自己の利益(喜び)と他者への利益(貢献)が同時に最大化する営みです。

こうして考えると、自分が喜ぶことか他人を喜ばせること、どちらが先でもいいので、どちらかに一生懸命取り組むことこそ、人生でも最も大切で尊い行いではないかと思うのです。

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